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特集

これからの社会とCM(第10回)

第三次・担い手3法とCM ②

前号に続き、2025年度テーマ「第三次・担い手3法とCM」を特集します。今号(81号)では、前号(80号)の国土交通省インタビューを受けて、実際に担い手として現場で工事にあたる施工者(ゼネコン)とCMr(CM会社)の2者の責任者の方にお話をうかがい、現場の状況を深掘りしたいと考えています。施工者(ゼネコン)については、株式会社安藤・間 首都圏建築支店 常務執行役員支店長の酒井喜壽様、CMr(CM会社)については、株式会社山下PMC取締役専務執行役員の村田達志様にお話をうかがいます。さらに次号82号では国土交通省髙橋様、安藤・間酒井様、山下PMC村田様を一堂に会し企画特集「第三次・担い手3法とCM」を締めくくりたいと考えます。

(『CMAJ』編集委員 宇津橋喜禎、北野隆啓)

株式会社安藤・間 酒井喜壽氏インタビュー

株式会社安藤・間 首都圏建築支店 常務執行役員支店長 酒井 喜壽 (さかい よしひさ)
  • 2000(平成12)年 (株)間組 横浜支店 建築部 談合坂SA作業所長
  • 2012(平成24)年 同 建築事業本部 調達部長
  • 2013(平成25)年 (株)安藤・間 建築事業本部 事業推進統括部 調達部 調達推進グループ長
  • 2016(平成28)年 同 建築事業本部 事業推進統括部 調達部長
  • 2018(平成30)年 同 建築事業本部 建築事業企画部
  • 2019(平成31)年 同 建設本部 建設統括部 調達部長
  • 2020(令和 2 )年 同 建設本部 建設統括部 調達部長 兼 建設本部 副本部長
  • 2021(令和 3 )年 同 執行役員 建設本部 副本部長
  • 2023(令和 5 )年 同 執行役員 LCS事業本部長
  • 2025(令和 7 )年 現職
日 時
2025年10月6日(月) 15:30~16:30
株式会社安藤・間本社
ゲスト
酒井喜壽(株式会社安藤・間 首都圏建築支店 常務執行役員支店長)
出席者
北野隆啓(日本CM協会『CMAJ』編集委員/(株)山下PMC/進行・聞き手)
宇津橋喜禎(日本CM協会常務理事『CMAJ』編集委員/(株)建設エンジニアリング)

法改正後の公共建築工事での対応状況

酒井氏酒井氏

北野こ酒井常務の現在のご所属は「首都圏建築支店」ですが、最初にご担当地域や所管されている業務の概要をぜひ教えてください。

酒井首都圏建築支店は東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬・山梨の1都7県の建築事業を担当しています。また、同じエリアで首都圏土木支店が土木事業を担当しています。営業・工事・安全・事務・他を含めて内勤・外勤合わせて約460人の支店で当社建築 事業の約40%の売上を占めています。現場は約250~260人の職員が約40件の現場を運営しています。

北野昨年令和6(2024)年6月より「改正公共工事品質確保促進法(以下、公共工事品確法)」「改正公共工事入札契約適正化法(以下、入契法)」「改正建設業法(以下、建設業法)」の3法の改正がありまして、いわゆる「第三次・担い手3法」がスタートしました。改正自体の大きな目的として、〈担い手確保〉〈生産性向上〉〈地域対応力強化〉を柱とする対策が求められていますが、御社が担当される公共工事の状況はいかがでしょうか。酒井常務のご所管は建築ですから、まずは公共建築工事の現場での対応状況をうかがえますか。

酒井特に担い手の確保については協力会社において大変大きな問題になっていまして、処遇改善や建設業の魅力向上が重要な課題だと考えています。公共工事の場合、発注段階で週休2日が決められていて、工期に反映されています。当社の場合、残業の上限規制 、週 休 2日、時 短につ いて の 取り組 みは2024年以前から始めていたので、2024年度からの対応も比較的スムーズにできました。ただ、実施してみると少ない人数では行うわけにはいきませんので、人数を増やすことで工費も当然かかります。そうなると1人当たりの生産性は下がります。要するにこなす量が少なくなるということです。売上が上がっても実はコストが上がっているため一見生産性が上がっているように見えますが、おそらく着工面積はここ20年減っていますので、施工床面積当たりの生産性を計算すると全然上がっていないという実感があります。

特に公共工事では週休2日がしっかり実施されていて、当然祝日も休んでいます。現場に実際の状況を聞いてみると、個人の趣味の時間や家族との時間が取れるようになり、それで精神的にも結構楽になって、逆に仕事に対する意欲の向上につながるとの話も聞かれます。ですから今の流れは決して悪くないと思っています。ただ、協力会社の作業員の方たちはやはり日当で雇用されているところもまだありますから、そうするとどうしても労働時間が短くなれば、それだけ生産性が落ちてしまいますので、次には労務費アップをしていかなければならないと感じています。12月におそらく設計労務単価が出るはずですから、そこである程度上がってくるのではないかと予想しています。

北野北野

ITやDXツールについては、協力会社のリーダーもタブレットを利用してさまざまなツールを活用しているのが実態です。当社の場合、特にBIMを活用し、着工前にバーチャル空間で一度竣工させて、問題点の解決を先に行う、いわゆるフロントローディングを実施し、できるだけ事前に解決することを目指しています。そういう取り組みが今後進んでいけば建設業の時短などにつながっていくと思います。

ただ、今われわれはとりあえず週休2日を実施していますが、暦通り規則的に毎週末、祝日に休むことが、本当に生産性のいいやり方なのでしょうか。もしかするともっといい方法があるかもしれませんので、まずは休日の取得を定着させて、のちに再度検討する必要があるとも感じています。

北野今、担い手の確保の話と生産性の話と大きく2点お話しいただきましたが、まず担い手確保の中で言いますと、工程がしっかり確保されるようになったことで、作業員の方たちにはいい評価がある一方で、売上と作業の施工床面積のバランスまでは体現できていないということでした。その原因は今までは1日の労働時間の中で一定程度処理できていたものが、法に準ずることでうまく処理できなくなってきているのでしょうか。

もう1点うかがいたいのが、先ほどいったん週休2日の文化を根付かせてから本当にどのようなやりかたをすれば生産性が上がっていくのかを再検討してもいいのではないかというお話がありましたが、例えばどのような方法が考えられますか。

酒井躯体では、例えば週休2日を守ると、金曜日にコンクリートを打てば土日で養生ができます。そうできれば効率的ですが、必ず週休2日という形でいくと、工期が崩れてきますので、ある程度柔軟に対応する方がいいと考えます。

北野もう少し工期の枠の中で調整するということですね。

酒井さらに今は1か月単位で残業の上限が決まっていますが、2か月もしくは3か月単位にすれば、だいぶ変わってくるように感じます。

また、例えば札幌支店の現場などは、結構冬季の仕事が止まることがあります。今、夏がとても暑いので、7~8月の1か月間夏休みにする可能性も出てくるかもしれません。夏季休暇の日数を作業環境の良い時期に増やして年間の労働日数を調整する必要があります。そのようなことも今後柔軟に考えていく必要がありそうです。そうすれば生産性が上がると感じます。形式的に週休2日をずっと続けるよりは、そういう考えもあるのかもしれません。

北野そうすると地域格差のようなものが出てくる可能性もありますね。北海道などの寒冷地は冬以外の時に集中して作業して、それより南は夏を長く休むとか。

酒井その代わり長期休暇をきちんと取れたり……。それはそれでいいのかもしれません。

インタビュー風景インタビュー風景

土木工事での対応状況

北野公共工事では圧倒的に土木工事が多いと思います。土木工事の現場での対応状況もうかがえますか。

酒井土木工事も建築工事と同様に担い手の確保にかなり苦労しています。ただ、工期としては週休2日を基本とした予定工期にて発注されています。そのような点で建築よりもどちらかというと週休2日、時短、残業の上限規制などはやりやすいです。ただ、やはり建築と同様に、職人たちの労務単価を上げていくことがポイントです。土木の場合、今回の設計労務単価の提示でかなり変わるのではないかと予想しています。

また生産性向上も重要です。トンネルの掘削や造成工事の自動化、熟練工の作業の機械化など、かなり積極的に開発が行われています。

設計変更の精算については、当初協力会社に物価変動や物価上昇に応じた額や追加工事をきちんと払うようにするところからスタートして、私たちも実行しています。しかし公共工事の場合は例えば土木の場合、工期が3年や5年など長いものが多いため、われわれは協力会社への精算は設計変更・物価スライド分をその都度精算していますが、発注者からは多くは、年度末もしくは竣工前の精算となりますので、われわれが代払いをしているわけです。ですから随時精算していただけるようになれば助かります。おそらく地場のゼネコンにとってはこのことがかなり大きな負担になっていると思います。

北野まさに担い手確保という中で土木に関しては、先ほどトンネルの掘削の自動化あるいは機械化というお話がありまして建築よりも土木の方が自動化や機械化が進んでいるイメージがありますが、実際はいかがでしょうか。

酒井土木の方が自動化・機械化の面では進んでいるのではないかと思います。

北野それはどうしてでしょうか。

酒井やはり建築の方が最終的な仕上げも含めて細かい手作業的なところが多いこともありますし、デザイン性もかなりウエートを占めるからだと思います。トンネルなどの造成工事はデザイン性が求められるというよりも機能性が重視されるところが大きな違いかと思います。

北野担い手確保、また人員が不足している中で工事をどう進めていくのかに対して、自動化が1つのキーワードになってくるように思います。やはり機械が得意なところと職人さんが得意なところの領域がまだ分かれているように感じます。

民間建築工事での対応状況

北野次に民間の建築工事についてうかがいます。ご担当の首都圏地域では圧倒的に民間建築工事が多数だと推察します。いま「第三次・担い手3法」導入後の民間建築工事の現場での対応状況はいかがでしょうか

酒井これもかなり前から取り組み始めていましたが、発注者に週休2日でかかる工程は、取り組み当初は提示した工程より長くなったりしていましたが、今は必ず週休2日をベースに工程を提示しています。初期の頃は発注者からかなり反発がありましたが、工事費についてもある程度理解していただけるようになってきていますし、業界全体で取り組むことにより民間の発注者もかなり理解していただけるようになってきました。また、以前は物価上昇分を協力会社に適正に支払っても、発注者からはいただけない場合がほとんどでしたが、最近では交渉に応じていただける場合も増えています。今回の「第三次・担い手3法」には努力義務とありますが、見積提出時にこれくらい費用がアップしますというような「リスク(おそれ)情報」を示すことができるようになりましたので、交渉にのっていただきやすくはなっています。引き続き働きかけを行っていきます。

あと、以前は設計が終わった後で競争見積りを取るという形でしたが、現状では対応できるゼネコンが見つかりません。これは公共工事でも同様であり、早い時期にお話をいただくことが重要なのかと思います。2~3年後の案件をグリップしようという発注者が最近大変増えていて、やっとそういう形になりつつあるかと感じています。私たちも例えば2027年の案件に取り組むときは、サブコンも全部セッティングしてからお返事しますので、そうなったときにその物件をこのくらいのコストでやりたいということを少し時間をかけて発注者に話し、無駄を省くようにしたいです。当社でも3年くらい前からBIM-LEANというBIMを活用したフロントローディングの取り組みをしています。当初は日本では難しいと言われていましたが、先の案件を発注者と一緒にサブコンも含めてつくり上げていき、フロントローディングをしながら無駄を省いていくことは日本でもできるのではないかと考えています。

北野今までの一般的な取り組みは、実際は設計図ができてからいわゆる発注行為があって、その発注行為のタイミングで人や資材を調達するという方法です。けれども今おっしゃったのは、それよりもよりデザインビルドやECIに近い、チームでパートナリングをする形で、かなり前倒しでプロジェクトを進めていくというやり方だと思いますが、そちらの方がやりやすいかもしれないということでしょうか。

酒井おそらくそちらのほうが、発注者にとっても良いもの、やりたいものをそれなりのコストでやれるのではないでしょうか。そうなった時にCMrの皆さんに同じようにスタートしていただければできるのではないかと思います。

北野実際に人がいないというのは建設業界全般の話なので、本来であればその中でチームでやっていくことが、いちばん効率が良いと思います。

今はBIMで設計施工、デザインビルド方式でやることはほぼ標準化されている状態なのでしょうか

酒井当社では10億円以上の設計施工案件は、BIMで対応するというルールになっています。当社だけでなく、大手のゼネコンであれば設計施工は当たり前にBIMで対応するということになっていると思います。

着工面積が危機的に減少

北野 続いて、「第三次・担い手3法」による、担い手確保のための働き方改革・技能者の処遇改善等、まさに建設業の持続可能性を高めていくところでは非常に重要な動きであるという一方で、発注者側にとっては今までの建設コストの増大化、工事期間の長期化につながり、発注者の事業の持続性を損なうのではという議論もあります。それぞれの事業という目線に立ったときに、施工者の立場で法改正の目的や法施行による遡及効果などについてご意見をいただけますでしょうか。

酒井 建築の着工面積がどんどん減っていて、リーマンショックの時よりも少ない工事量もこなせない状態まできてしまっています。それは、建設業にとってかなり厳しい状況になってきていると感じます。売上は上がっているのですが。ただ、これは一時的なことかもしれませんが……。

北野 大型の建物や、新築建物の単価がここまで上がってきた時に、改修ならどうかという話もあるかと思います。工事の種類によって、物件数が減っているものもあれば、増えているものもあるのでしょうか。

酒井バブルの頃にたくさんつくった建物が今改修時期に入ってきました。特に電気設備関係は更新時期に入っていて、例えば、大手サブコンの売上の半分はリニューアルと聞 きます 。中 堅 の サ ブコンは 、現 状 2 0 ~30%がリニューアルで、50%を目指すと言っています。リニューアルの利益率は大変高く、そ の ベ ー スは バ ブ ル の 頃 の 工 事 のリニューアル工事ですから建築関係もリニューアルはまだしばらく伸びるのではないかと思われます。

また、発注者、特に不動産系やデベロッパー系などの建物を建てて事業をしている方たちは収支が悪くなって、おそらく最近は賃貸もやっと上がり出しています。いちばんネックになっている労務費、労賃、つまり人件費が日本全体でこのまま上がらない状態でいくと、日本の建設業はなくなってしまいかねません。

北野日本だけですね、人件費が30年も上がっていないのは。

酒井その辺を改善していかないといけないと思います。昨今発注者もやっとわかってこられたと感じます。

最近はかなり変わってきましたが、法定福利費を払ってもらえない職人さんたちはたくさんいます。そういう業界に例えば自分の子どもを入れるでしょうか。法定福利費がかかるとやはり労務費は上がります。けれども法定福利費や社会保険料を職人に払っていないところもあることが、発注者に理解され始めてきてはいます。建設業、とくに協力会社に対しては、発注者の目というか社会の目が変わらないとどんどん衰退してしまうと思います。やはり、日本としてそこは変わるはずですし、変えなければならないですね。

労務費と資材費の切り分け

北野今、法定福利費の話がありましたが、まさに国交省が今年12月の施行を目指して、「労務費の基準」作成に動いていると聞いています。ただ建設業界はランプサム方式という総価請負契約が長く採用されていたこともあり、労務費や資材費の仕分けが必ずしも明確化できず、そこの基準化をしてもなかなかコントロールできないのではないかという課題もあると聞きます。今御社での協力会社への働きかけの状況を聞かせていただけますか。

酒井協力会社との契約は可能な限り労務費と資材費は分けて、法定福利費は外出しにしています。分けられるものは分けるようにしていますが、仕分けしづらいものがかなりあります。もともと建設業の数量と単価に対する単位が㎥、㎡、製作物ですと何箇所というような形になっています。ひと口に何箇所と言っても、その部分にどれだけの人工や材料がかかってでき上がっているのか非常に割り出しにくいところがあります。おそらく躯体系はある程度仕分けられると思いますが、仕上げ系はまだまだ労務費と資材費の仕分けがきっちりできないのではないでしょうか。

北野そうなると、実際やろうとするとかなりハードルが高いのではないかということで すね。

酒井かなり進んできてはいますが……。もともと法定福利費を外出しにして、法定福利費分を必ず支払うようにというところから始まっていました。その時点で法定福利費を計算するには労務費がないと計算できないため労務費と資材費を分けるようになってきました。

法改正に対する発注者への周知

北野次に「第三次・担い手3法」施行後の発注者への対応状況をうかがいします。改正建設業法において、資材価格の高騰など請負契約に影響を及ぼす「リスク(おそれ)情報」について、これは基本的に契約前に受注者が発注者に通知することが義務化されましたが、この仕組みが変わったことに対しては、うまく機能しているのでしょうか。

酒井全部ではありませんが、トータルの事業費はこのくらいの金銭的なリスクがあるだろうといった時に、発注者によっては事業を前に進めるのか進めないのかを検討する案件も中には出ています。見積提出時に資材価格や労務費の物価上昇リスク費を提示していますから、この情報をもとに発注者も投資額の検討をしていると思われます。あとは精算方法を明確に提示することが今回の法改正の趣旨ですが、これは努力義務になっています。けれどもある程度続けていると皆さん理解し始めているような気がします。

以前は価格高騰のリスクをお話ししてもなかなか理解してくださらなくて、なかには1年をかけて計画の見直しを行い規模を縮小してコストが下がるかと思ったら、かえって工事価格が上がってしまった案件もありました。それで事業自体を見直す発注者もいるようです。現在は価格高騰リスクを理解していただける発注者が増えつつありますが、いまだにもう少し待てば価格が下がるだろうと、事業を延期される発注者もいます。契約前に発注者に通知することはある程度機能していると思いますし、良い方策だと考えています。

CMの役割

北野今、御社の工事の状況や発注者、協力会社の状況をうかがいましたが、今回日本CM協会ということでお話をうかがっている 中 で 、コン ストラクション・マ ネ ジャー(CMr)との関わりについてお聞きしたいと思います。「第三次・担い手3法」がスタートしたあとで、CM会社が参画している御社の案 件 が あれば ぜひ教えてください 。また、CM会社の存在を施工者の方々がどのように感じられていたかを教えていただけますでしょうか。

酒井昨今のゼネコンやサブコンの人手不足や物価高騰などのこれまでと違った環境について、CM会社の方たちが第三者の立場で発注者に対して理解を求めていただけること、また、工期設定についても今は週休2日が当たり前である状況を説明していただけて非常に助かっています。半面、発注者との直接のやりとりがなくなる場合があり、発注者の本当にやりたいことや本音がわかりづらくなるような場面もあります。けれども何よりも、ゼネコンや建設業界の今の状況を伝えていただけることが、われわれとしてはとてもありがたく感じています。また、2年、3年先の案件をどうやってグリップしていけるかは、発注者だけではできないことですので、CM会社の皆さんに舵を切っていただくことが大事だと思っています。

北野まさに今のお話の中で、ここ1、2年、発注者がプロジェクトをやられる時に施工者がそもそも忙しすぎて対応いただけないという話もありまして、どういう形であれば受けていただけるのか調整してほしいという依頼がすごく増えました。逆に、施工者側からはこういう形であれば取り組めると示してほしいという依頼がありますね。それは2年、3年先を見越した意識があるからだと思います。基本的にはCM会社の第三者性であったり建設業界の状況を代弁する役割に関しては、プラス評価をいただけているように感じます。

一方課題として、発注者のやりたいこと、本音がわからないということに関してうかがいたいです。CMrとしては発注者のニーズを整理してお伝えすることで、より効率的に仕事をしていただきやすい環境をつくろうとしていますが、逆にプロセスがわからないゆえに、もっとできるのかもしれないという機会を摘んでしまっているのではないかというご指摘でしょうか。発注者の発言やニーズはなかなかうまくまとまってこないことがありますが、一緒に対峙する機会がもっとあってもいいのではないかということなのでしょうか。

酒井あまりこういうケースはありませんが、しいて言えば中にはCMrに完全にシャットアウトされてしまって、本当に発注者がそう話しているとは思えないということもあります。ですから常に第三者的な立場で状況を発注者に伝えていただければ圧倒的にわれわれとしては助かります。

北野これからもCM会社が参画してこういうことは良かったとか、逆に良くなかったみたいなことを発信していただけるとありがたいと思います。

最後に、今回の「担い手3法」の法改正もあれば、業界全体としての人材不足、建設費の高騰も、今後変化が続いてくると思われますが、われわれ日本CM協会ならびにCMrに期待することがあれば、少しお話を聞かせていただけますか。

酒井建設業界の実情を正確に発注者に伝えていただきたいと思います。また、発注者が求めていることをわれわれ施工者に伝えていただきたい。建設業の担い手を確保していくにあたって処遇改善は急務だと思っています。特に一般の発注者には、われわれや協力会社の方たちの処遇改善について実態をよくわかっていただけないところがあります。またわれわれが話してもなかなか理解していただけないので、第三者的な立場で、皆さんから伝えていただければ、発注者もだんだん理解してくださるのではないかと思います。特に処遇改善に関してわれわれは前向きに取り組んでいることを皆さんに話していただけると助かります。ぜひご協力をいただきたいです。

北野貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。