日本CM協会設立25周年『マネジメントの地平』
第1回:プロジェクトマネジメント(PM)
2026年度は2001年の日本CM協会設立から25周年にあたります。
今年度の機関誌企画特集では、この機を捉え、CM(コンストラクション・マネジメント)の周辺・近縁領域から、時には異領域までの「マネジメントの地平」をあらためて見渡してみようという趣旨から、様々な領域のマネジメント団体などの取材を通じて、われわれの現在位置の再確認と今後の展望につながる新たな学びを得る特集を企画しました。
第1回の今回は「プロジェクトマネジメント(PM)」を取り上げ、2つの団体から組織概要や主な活動内容などを伺いました。
(機関誌編集委員会)
Ⅰ. 一般社団法人 PMI日本支部 「PMBOK®ガイド」を発行するグローバルPM団体PMIが認めた日本支部
PMI 日本支部
寺田 尚弘 氏(一般社団法人PMI日本支部 事務局長)
奥原 修 氏(PMI Asia Pacific)
浦田 有佳里 氏(一般社団法人PMI日本支部 会長)(途中参加)




軍司 太郎(日本CM協会『CMAJ』編集委員/日建設計コンストラクション・マネジメント(株))
石原 隆裕(日本CM協会『CMAJ』編集委員/(株)ヴィック)
PMI日本支部の概要
ーまずPMI日本支部様の概要をご説明いただけますか。
端山1969年アポロ計画の頃、アメリカで 航空宇宙や防衛産業で培われたノウハウを整理して「Project Management Institute(PMI)」というNPO団体が発足しました。プロジェクトマネジメントを普及・啓発し浸透させることが団体の趣旨です。2026年2月末で会員数は77万人、国は100カ国、支部は約300あります。アメリカの場合、都市ごとに支部があるため何十もあります。インドには8支部ありますが、日本は1つです。
PMI全体としてはグローバルな団体であり、日本支部というと、PMIの一部、下部組織のように思われがちですが、チャーターアグリーメントという契約を締結した団体を意味します。つまり、支部を作りたい人たちは、組織の形を整えてPMIと交渉して契約を締結すれば支部を名乗れます。チャーターアグリーメントの最初に「支部は独立した提携関係がある組織である」とあります。つまりあくまでも独立採算・運営であることを明確に謳っていますが、PMI Japan Chapterという名称は使うことが許されています。私たちはPMIの理念に共鳴し、PMIから提示された規則に基づいて運営しています。また、2番目に支部はPMIの代理人ではなく、PMIであるかのように振る舞ってはならないと規定されています。
ミッション・ビジョン
ーPMI日本支部のめざすものはどのようなことでしょうか。
端山PMI日本支部は、PMIの方針・戦略に沿ったミッションとビジョンを掲げています。我々のミッションは、会員がプロジェクトマネジメントの専門能力を高めることと、プロジェクト成功による価値を実現するということがあります。つまり世の中の役に立ちましょうということです。したがって、プロジェクトがうまくいって世の中が良くなることが究極の目的です。プロジェクトマネジメントがうまくいったことで終わりではなく、その結果としてプロジェクトがうまくいってこそ、われわれの役割を果たしたことになるので、「プロジェクト成功」という言い方をしています。
ビジョンは、5~10年程度の将来を見据えた展望であり、「プロジェクトの価値に不可欠なスキルである」と、世間の人にもっとプロジェクトマネジメントを分かってもらい、使ってもらうために認知度を上げたいということです。
PMIの根幹プロダクトは、Standard, Certification, Accreditation、これは、「『PMBOK®ガイド』など標準書の発行」「PMP®(Project Management Professional)など資格認定」「大学の教育プログラム認定」にあたります
寺田PMP®資格の受験料の割引を受けるだけであれば本部会員になるだけでいいのです。けれどもPMP®資格を取った後に、自国でプロジェクトマネジャーとして仕事をしたい、資格制度を維持するために勉強したい、その際母国語で勉強したいしセミナーにも出たい。そこをサポートするのは支部でしかありません。ですからPMI日本支部は支部会員ならびに日本のプロジェクトマネジャー、およびPMP®資格保持者(PMP®ホルダー)に、勉強の場、学びの場、スキルアップの場を提供します。 本部は根幹プロダクトとして、標準をつくり資格制度を整備し、会員制度を運用しています。そして300の支部があってこそPRも普及も推進もできます。けれどもそこに経済的依存関係はなく、独自に活動しているという仕組みです。
端山Accreditationとは大学の教育プログラムの認定です。国際的にはいろいろな大学にPM学科があって、PMのカリキュラムを大学側が申請してPMIに認定してもらっています。そのようなPMIのお墨付きPM学科が世界中にありますが、現状日本には1校もありません。
日本支部では、独自に多くのイベントを開催していますし、積極的に集まってくれる人たちでいろいろな勉強会や研究会をしています。
PMI本部がPMP®資格や『PMBOK®ガイド』などのプロダクトを出してきますが、支部は、これらに共鳴しているからPMI本部と契約を交わして普及啓発活動を推進します。会員になると安く買えたりするわけです。PMI本部スタッフから見ると会員はお客さんでもあり、PMI本部理事の選挙権を持っています。でも支部にはPMI本部の意思決定に係る権限はありません。
支部はどちらかというとPMIの主要プロダクトを利用する側であり、運営に関わることはできません。だから言ってみれば支部はPMIのファンクラブであり、あくまでもプロジェクトマネジメントに関心を持っていて自分も資格が欲しい、または資格を維持したい、標準を勉強したいという人たちのグループなのです。
会員数・会員属性
ー会員数はどのくらいなのでしょうか。
寺田日本支部の会員は現在約7,800人(4月末現在、7,887人)であり、会員種別は本部が定めた正会員、学生会員、退職者会員の3種類です。法人会員や賛助会員という制度はありません。会員管理はPMI本部が行います。PMI日本支部に入るには、PMI本部の会員になる必要があります。本部の会員になった人のうち希望者が支部の会員になるというスキームです。北東アジアの香港、台湾、韓国、モンゴルなどの近隣支部と日頃からいろいろとお付き合いをして、さらに東南アジアやオセアニアの支部の人たちとも交流する機会があります。
ー会員にはどういった方たちがいらっしゃるのでしょうか。会員の方の属性を教えてください。
端山以前日本支部は7~8割はIT系の人たちでしたが、今は3分の1程度になっています。アンケートでは、コンサル、製造業、あと不回答が2割近くあり、個人情報を公開したくないという人と、既存の業種/職業分類に当てはまりにくい会員の方が増えていると考えられます。「その他」には研究機関や社団法人や財団法人なども該当します。コンサル、製造業、金融、通信の絶対数は伸びていますが、割合は低下傾向であり、製薬、自動車、建設、医療福祉、エネルギー、政府、防衛は絶対数も比率も増えてきて、多様化してきました。ただ、これらの会社のIT部門の方ということも考えられます。
日本支部でIT系の会員が多くを占めるのは、約20年前にITプロジェクトが失敗して赤字プロジェクトがたくさん出たために、この世界から入られた人が多いのです。スポンサー企業もそのような会社が多いのですが、プロジェクトマネジメントはもっと広いものですので、認知度を上げて、できるだけ広くいろいろな業界の方に参加していただきたいと思っています。
ー会員の方々の年齢構成はいかがでしょうか。
端山2015~2025年の10年間の推移を見ると、ここ2、3年で20代、30代の若手が増えて、平均年齢が2歳下がりました。全体的には40~50代が多いです。
ー法人は会員になれないのですね。
寺田はい。けれども法人スポンサー制度があり、スポンサー会費を払っていただいている法人スポンサーが111社あって土台を支えていただいています。
端山支部が新たな会員区分を作ってはいけないという規則があるため、賛助会員は禁止されています。そこで日本支部を作った人たちが、25年前くらいに考えたのが、スポンサーです。法人スポンサーは会員にはなれないので、会員としてのメリットは享受できません。したがって会員価格は適用されず、会員だけが参加できる研究会などには法人スポンサーの社員は参加できません。このような線は引いています。イベント参加費などは3種類になり、会員価格と法人スポンサー価格と非会員価格です。
ースポンサーのメリットはどのようなところにありますか。
寺田年に4回、法人スポンサーの窓口の方やマネジメントの方に最新のトピックをご紹介するセミナーをしています。そのうちの2回は会場開催なのでそのあと懇親会を行い、法人スポンサー企業同士でネットワークをつくっていただきます。またスポンサー社員の方には書籍の割引や日本支部が開催するセミナーの受講料の割引があります。さらに、法人スポンサー社員の方が活動できる勉強会がありますので、そこでいろいろな自己研鑽をしたり、ネットワークを広げたり、またここに来る方はプロジェクトマネジメントの仕事に悩みを持っている方が多いので、若手をどう育成すればいいのか、うまく活用できるようなコンテンツが作れないかと、毎年成果物を作って持ち帰っていただいています。
ー社員に対して福利厚生的な意味合いもあるのでしょうか。
端山なかなかそこまではいっていないかもしれません。ただ法人スポンサー企業の中でも社内研修が十分整備できない場合には、PMI日本支部が提供するセミナーやイベントを活用していただけていると思います。
寺田プロジェクトマネジメントは業界を横断していますので、業界団体の協会とは違う角度で社員に自己研鑽の場を考えて、最近は加入してくださっている企業の方も増えてきています。コアメンバーを送り込んで横断的なネットワークを広げてフィードバックしてほしいという要望があるようです。
ースポンサー制度にある行政とアカデミックについて具体的に教えていただけますか。
端山行政はあまり具体的には動いていません。アカデミックは大学の先生や工専の先生もいらっしゃいますが、PMに関心をお持ちの大学に所属している先生が会員になっています。それらの先生たちが集まって定期的に情報交換されていますし、年に1回くらいは直接会って、お互いの研究発表などもされています。ただ、プロジェクトマネジメントそのものを教えるというよりは、PBL(Project Based Learning)という課題解決型学習といいますが、ワークショップ形式で実際に手を動かすことをプロジェクトベースで学生さんたちに教えることに関心をお持ちの方が多いです。
研究会活動
ー会員の方々の活動について教えてください。
端山いろいろなセミナーやワークショップをしていますが、最近はオンラインがメインです。研究会活動はグループが20~30あります。こちらも基本はオンラインで実施し、時々対面で集まるというような感じです。また、メールマガジンやニューズレターも会員向けに送付しています。3月末にプロジェクトマネジメント研究報告の最新版が出ましたが、研究会のメンバーが1年間のまとめとして論文化してくれていて、それを集めて発行しています。それが6年目になりました。
これは国のサイトのJ-Stageに載せていまこれは国のサイトのJ-Stageに載せていますので、どなたでも見ていただけます。
寺田約800~1,000人のアクティブメンバーのボランティアが、ただイベントに参加するだけではなく、自分から活動していこうと研究会で勉強したりネットワークを広げたりしています。各研究会は月に1度基本2時間の月例会を開催しており、いろいろな討議をしたり次の発表の準備をしたりしています。その活動自体も自己申告でPDU(ProfessionalDevelopment Units)という単位の申請ができます。PMP®資格保有者は資格更新のために3年間で60PDUの取得が必要です。1つ研究会に入ると、毎月の月例会に2時間参加して、その内容を申告すれば、年間24PDUを獲得できます。せっかく支部会員なのだから積極的に活動してスキルアップとネットワークを構築し、かつPDUを獲得しようというメンバーが1,000人くらいいるということです。
端山研究会などにいったん入った人は、仲間もできますので、末長く続けてくれるようになります。本部会員になれば、支部の会員にならなくてもいいのですが、支部会員になると近くに知り合いもできて、友だちがいて、情報交換ができるというメリットがあります。
ー業界団体とは少し違って、いろいろな価値観を共有する人たちの集まりであるという理解でよろしいでしょうか。
端山個人の集まりなので、プロフェッショナル、専門家団体ですね。実は設立時は、大手の会社に協力してもらいましたので、業界団体に近かったのかもしれません。いくつかの大きな組織に支えられて始まりましたが、その後そういうカラーが薄まって今は理事も大手企業で占められている感じではなくなりました。フォーラムやフェスタなどの大きなイベントの招待講演の講師の方も、最近はあまり知名度の高くない会社の人たちも多く、この人の話を聴いてみたいと会員が調べてきて、お願いするようになっています。要するに専門家個人が研鑽するような団体です。
寺田また、部会の中には会員でない方も入れるコミュニティというものもあります。
私は前職、ゼネコンに在籍していてITでコンストラクションをサポートする側にいました。PMI日本支部はITのメンバーが多いですが建設メンバーもいるので、2023年に建設コミュニティを立ち上げました。他にも7つのコミュニティがあり、幅広くメンバーを募集しています。
行政コミュニティ
ー行政との関わりはありますか。
寺田新しい動きとして行政コミュニティができました。行政におけるプロジェクトマネジメントの実態を新会長の浦田から話してもらいます。
浦田地域でいろいろと活動していく中で自治体と協力していくことがあります。昨年から行政コミュニティをつくって、今200人くらい登録してくれています。約3分の1が行政職員の方で、3分の2から半分くらいが民間企業の方々です。いままでPMI日本支部としてあまり関わっていなかった民間企業も入ってくださっています。行政のプロジェクトマネジメントはいろいろなところでありますが、やはり事業がうまくいかないと悩まれている行政職員の方も多いので、一緒に勉強したりしています。中央省庁の方も、地方自治体の方もいらっしゃるので、いろいろな方が参加されているという感じです。
端山行政の方は簡単に民間の団体に入れませんので、個人で入っていただける場にしています。
ーCMでは自治体との関わりがとても多いのですが、行政サイドから見たトータルのマネジメントのニーズは今はとても高いように感じます。
浦田私もいくつかの自治体と関わっていますが、プロジェクトマネジメントを研修に取り入れています。これは一部の部署だけではなく、全庁でやった方がいいということになり、全庁の職員さんがプロジェクトマネジメントを勉強するようなことが進んできています。
『PMBOK®ガイド』第8版
ー昨年新しい『PMBOK®ガイド』が発行されました。
端山まだ英語版しかありませんが、第8版が2025年11月に発行されました(図1)。
日本では日本語版が欲しいという人たちが多く、本部も日本の市場が重要なので日本語版をつくっていますが、われわれも翻訳に貢献する場合、本部側で翻訳を進める場合、いずれもありますし、監修したりレビューをしたり協力しながらつくっています。
ー『PMBOK®ガ イド 』の 日 本語版はどこから出ているのでしょうか。
寺田PMI本部です。『PMBOK® ガイド』第6版は完全に本部が印刷まで含めて制作し、日本支部は本部が扱っている印刷会社から輸入して販売しましたが、翻訳上の問題、監訳上の問題、本としての品質の悪さなどいろいろな問題を抱えていました。印刷や出版の質が日本と他の国とでは全く違うのです。『PMBOK®ガイド』7版を制作するときに同じ繰り返しをしないために本部と支部がきちんとライセンス契約をして日本支部で監訳までして、内容は本部がチェックして、制作も英語版とほぼ同じページ構成で同じレイアウトでつくりました(図2)。つまりオリジナルはもちろん本部のものですが、それをライセンス契約して日本支部が代理で制作をしたり販売をしたりします。
ー『PMBOK®ガイド』はPMIの核をなす知識体系と言われていますが、そもそも『PMBOK®ガイド』はどのようなものなのでしょうか。
端山『PMBOK®ガイド 』はあくまでもプロ ジェクトマネジメントの知識を体系化するために書かれたものです。5年おきくらいに改訂されています。もともとはアメリカの防衛関係、航空宇宙の人たちが中心にそこで培ったノウハウをまとめたものでした。団体ができた1969年から約20年かけて延々議論をして、1996年に『PMBOK®ガイド』初版ができました(日本語版は1997年3月発行)。その後内容がガラッと変わっていきます。第7版で跡形もなく変わって、第8版でまたさらに変わりました。その時々でみんなが集まってつくっているとしか言いようがありません。構成は「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」と大きく分けると5つで、変わらないことはそのくらいです。支部は組織として関わることはできませんが、会員個人は参加できるので、手を挙げていろいろな思いを持った人が参加するため、毎回違うものができるのです。
寺田『PMBOK®ガイド』第6版の時には標 準と呼ばれている基本的な原理原則と、それをプロジェクトに適応するときにプロセスをどうすすめるか、インプットアウトプットが全部一緒になっていました。それが第7版ではプロジェクトマネジャーは、「こうあるべき」「こう思想すべき」などの原理原則だけが書かれていて、その時にどんなツールを使ったらいいのか、みんなで何をやったら共有できるのかは『PMBOK®ガイド』第6版を参照していましたが、その後、『PMBOK®ガイド』第6版のプロセス部分が『プロセス群:実務ガイド』として別途発刊されました。それがまた戻って一緒になったのが『PMBOK®ガ イド 』第 8 版です。プロジェクトの立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結で何をしなければならないかプロセスも提示されています。
ー改訂版の大きな変化に会員の方も驚かれているのでしょうか。
端山『PMBOK®ガイド』第7版の時はプロセスがなくなったのですごかったですね。しかし、これをそのまま見て仕事をしている人はいないと思います。各社これを参考にしながら自社の社内標準を整備しています。専門の人がある程度これを踏まえて大きく食い違わないような社内標準をつくっているわけです。これまでの改訂は少し増えた、減ったというくらいでしたが、これは全然違うのでどうしようかということになりました。
寺田『PMBOK®ガイド』に 関しては 、PMBOK®ガイドセミナーを支部が独自で開催しています。私は第6版の時からサポートをしていますが、『PMBOK®ガイド』第6版まではプロセスを勉強しているので、こういう時には何をしなくてはならないのか、どんな準備が必要かという具体的な話でしたが、『PMBOK®ガイド』第7版は皆読んでもよくわからないと言うのです。ただ、PMBOK®ガイドセミナーの講師が読んだら「これが欲しかった」とおっしゃる。プロジェクトででき上がった成果物がお客様や世の中にどのような価値を見出せるかを常に念頭に置いてプロジェクトマネジャーは行動すべきだという行動指針が書いてあるのです。皆勉強したら「なるほど」と思ったようですが、「こんな時どうする」はどこに行ってしまったのかと世界中が迷って『PMBOK®ガ イド 』第8版が出たわけです。つまり『PMBOK®ガイド』第6版と『PMBOK®ガイド』第7版がセットなのですね。
ー第8版だけ読めば網羅されているのでしょうか。
端山網羅するという意味では、おそらく『PMBOK®ガイド』第8版だけでは薄いのだと思います。昔のようにある限定されたプロジェクトであれば、網羅的に書けたのですが、どんどん厚くなってしまって網羅性を諦めざるを得ないので、ざっくり書かれているのですね。
寺田『PMBOK®ガイド』第6版はウォーターフォール型の従来型のプロジェクトの書き方なのです。でも今はアジャイルが主流になっていますし、ハイブリッドで動くようにもなって、『PMBOK®ガイド』第6版には別冊で『アジャイル実務ガイド』が付きました。これをアジャイルに適用するときにはこう考えようということを、『PMBOK®ガイド』第8版には本体に入れています。
端山こうすればいいと言うことはできないのが、ここ15年、20年なのだと思います。
資格制度
ー次に資格制度について教えていただけますか。
端山1984年からPMIはPMP®資格の認定を開始し、今世界で取得者が167万人、国内では5万5千人で1か月に約1,000人増えています。他にも約10の資格があります。
PMP®は『PMBOK®ガイド』のテストではなく、『PMBOK®ガイド』はPMP®試験の1参考書です。いろいろな資料や経験を持ってプロジェクトマネジメントを行い、プロジェクトマネジャーとして実務的に仕事ができるかどうかをPMP®で確認する資格認定です。ですから必ずしも『PMBOK®ガイド』で勉強したから取れるわけではありません。
奥原PMI本部が開発したPMI Infinity™は、ChatGPT系の対話基盤を活用した、PMI向けに特化・制御されたAIアシスタントツールです。会話を通じて、リスク・マネジメントプランなどのプロジェクト関連文書の作成支援を受けたり、プロジェクトで課題に直面した際に、PMIの知見に基づく考え方やアプローチを確認したりできます。PMIのプロジェクトマネジメント関連コンテンツを土台としているため、汎用AIと比べて、PMIの文脈に沿った支援を受けやすい点が特長です。また、PMP®試験対策においても、学習の観点整理や想定問題の作成支援などに活用でき、試験準備と実務支援の両面で信頼性の高いサポートを提供しています。
PMP®とは別に、CAPM®(Certified Associate in Project Management)試験もあります。位置づけとしては、CM協会におけるCCMJとACCMJの関係に近く、実務経験をお持ちの方にはPMP®、一方で実務経験がまだ十分でない方や、学生を含むこれからプロジェクトマネジメントを学ぶ方にはCAPM®を推奨しています。現在、日本のPMP®取得者は5万5千人を超えています。一方、CAPM®は日本語での受験が可能で、日本語教材や学習環境も昨年夏ごろから本格的に整いました。そのため、CAPM®取得者は現在約800人の段階ですが、今後はさらに増加していくと考えられます。実際に、ATPによる新しいCAPM®研修コースの開設も複数聞かれており、企業の若手育成や大学・教育機関での活用を通じて、認知と取得者数の拡大が期待されます。
ーPMP®の資格を取るためには対策講座を取らないと、『PMBOK®ガイド』を読んだだけではなかなか難しいものでしょうか。
奥原資格要件として、PMP®試験では所定の学歴要件に加え、一定期間のプロジェクト経験が必要です。4年制学位またはそれに相当する学歴をお持ちの方は、現行試験では過去8年以内に36か月以上のプロジェクト経験が求められます。さらに、35時間のプロジェクトマネジメント教育の受講も必要で、ATP研修、オンデマンドコース、eラーニングなどで要件を満たせます。申請時には、学歴、経験、教育受講歴を入力し、PMIで受理されると支払い手続きに進みます。その後、受験料を支払い、試験日程を予約して受験します。CAPM®は実務経験要件がなく、学歴要件と23時間の教育受講で受験申請できます。
端山PMIが用意しているPMP®試験のための受験対策講座があり、翻訳もされているので、それを使って研修を提供する会社がATP(Authorized Training Partner)です。PMI本部と世界中の研修会社が契約をして、そのライセンスに基づいて研修を提供する会社が日本には50社くらいあって、研修を提供しています。
また、PMP®資格は3年更新です。3年間、60時間勉強するという条件を満たさないと資格が失効してしまいます。これがPDUですが、このPDUを発行する研修をATPは提供することができます。つまりPMIが提供している公式コースを提供することと、ATPが独自に用意したプロジェクトマネジメント関係の研修を提供することがあって、どちらにしてもPDUの単位を発行する権限を契約して取ります。PMI日本支部はATPではありませんが、PDUを発行する権限はもらっていますので、われわれがいろいろなセミナーを開催すると、会員は他の民間のATPで受けるよりは安い料金でPDUを取ることができます。つまりPMP®資格保有者が支部会員になって、支部のいろいろなイベントに来てPDUを取得する仕組みになっています。
建設系の資格とコミュニティ
ー建設・建築の人向けのプロダ クトや、先 ほどお話に出た建設コミュニティについて教えてください。
奥原建設分野では、PMP®に加え、建設業界に特化したPMI-CP™という資格もあります。日本でも関心は出始めていますが、現時点では英語教材への依存もあり、普及はこれからという段階です。
海外案件や海外企業とのJV、国際プロジェクトでは、こうした国際資格が役立つ可能性があります。日本では建設系資格が充実している一方、グローバルな場面で知識や経験を示す手段としてPMI-CP™に関心を持つ人もいます。実際に、日本支部の建設分野関係者からも活用可能性への問い合わせが寄せられています。
寺田建設コミュニティでは建設業界に関係するメンバーが集まって、『PMBOK®ガイド建設拡張版』という建設業に特化して建設プロジェクトに適用するためのガイドブックができました(図3)。これをベースに皆で集まってまず勉強しようと、2023年に始まって今ちょうど2年半です。1年半くらいかけて毎月1章ずつ読み合わせをして、メンバーがディスカッションしながら学びを持ち帰っていきました。今はそれがひと通り終わったので、次に「建設プロジェクトにおけるAIの活用」というテーマで2か月勉強会を行いました。PMIの中にもAI for PMとPM for AIというAIプロジェクトにPMをどう活用するのか、逆にPMにAIをどう活用するのかを真剣に議論して研究しているコミュニティもあります。彼らと今建設業界で使えるAIの技法は何か、これからどんなことが期待されるのかというディスカッションをしました。このようにテーマを絞って、毎月1時間の学びと30分のネットワーキングをやっています。メンバー構成は不動産、土木、電力、通信、建築専門業者、建築営繕、プラント、コンサルなど、建築関連で募集すると言ったら、これだけの方たちが参画してくださっています。業種職種もいろいろです。今80人くらいで、プラント、土木のコンサル、施工、そして建築設計の方もいらっしゃいます。PMP®を持っていなくても、建設関連のプロジェクトをマネジメントしている人はたくさんいますので、PMIに閉じない世界でネットワークが広げられるように、コミュニティという考え方があります。AIもそうですし、行政もそうです。
端山コミュニティは会員でなくてもいいので、プロジェクトマネジメントがメインではなくて、建設の専門家やAIの専門家の方たちにもここ数年来ていただいています。
寺田建設コミュニティに来るメンバーでPMP®を持っている方の半分は海外プロジェクトを経験した人です。持っていない人は一級建築士や設備の専門の資格を持っていますが、それだけではなくプロジェクトマネジメントの資格がほしい人が入ってきます。皆さん最初に自己紹介してもらいますが、やはり1番は業界を超えて建設を広く見たときの自分の悩みを語れる仲間がほしいということで来てくださっています。
企業の海外部門の方たちは日本国内以外で建設プロジェクトを行う場合、PMP®を持っていないと入札にも参加できないこともあります。いくら一級建築士を持っていても通用しません。ですから海外事業部の建設・土木のメンバーはPMP®を持っている場合が多いですね。
イベント・セミナー
ー定期的なイベントなどについて教えてください。
端山いろいろなイベントをやっています。例えば2日間のPMI日本フォーラム(図4)には毎年800人ほど参加いただいていますし、PMIジャパンフェスタは400~500人の参加者があります。ディスカバリーセミナーも毎回100人以上の参加者を集めていますし、そのほかのセミナーもやっています。
寺田PM Award 2026(図5)は、PMI日本支部がPMI本部の協力のもと、未来創造に繋がる日本国内および日本企業・団体による優れたプロジェクトを表彰する制度ですが、ちょうど今プロジェクトのエントリー期間です。CM協会の会員の方々やCMに携わっている方々が携わるプロジェクトで、ぜひエントリーしていただければと思います。
ー受付期間はいつまででしょうか。
寺田5月29日㈮までエントリーができます。基本的には2025年1月~12月の間に完了していること、完了が見えているものが評価の対象になります。
ー拠点施設のプロジェクトとともに地方のまちづくりや地方創生なども会員企業で取り組んでいますので確認してみます。
端山われわれとしては認知度も高めたいですし、たくさん応募していただきたいです。
他団体の関係・CM協会への期待
ー今回の企画でPMI日本支部さんとPMAJさんにもお話をうかがいます。PMAJさんとの関係、あるいはそのほかの団体との関係について教えていただけますでしょうか。
端山もともとPM関連の団体が3つあります。PMAJさんとプロジェクトマネジメント学会さん。いまPMI日本支部の理事でPMAJの理事を兼ねている方も2人います。私はもともとPM学会の理事を6年間やっていました。このように団体を兼ねて所属している人は結構多いです。
ー団体の性格がちがうのでしょうか。
端山もともとはENAA(一般財団法人エンジニアリング協会)からPMAJが生まれましたし、PM学会は学会として研究成果、技術、実践面でのちゃんと知識をまとめて発信する団体です。あとは国際P2M学会やITコーディネーター協会などとお付き合いがあります。
ー最後にPMI日本支部様から日本CM協会に望まれること、期待されることなどがありましたら教えていただけますか。
寺田建設コミュニティという勉強の場もありますから、これは会員以外の方に来ていただけますし、少し違った観点で見ていただけるかと思います。1~2回月例会を見学していただいて、面白そうだ思われたらぜひいらしてください。あとはPMP®資格者にとってみてもCM協会さんのイベント等で学びの場がありますので、後援や紹介させていただくことも可能だと思います。
端山コミュニティは、女性やAI、若手の会である未来創造、建設、行政・政府機関は自治体の人が結構いらっしゃいます。地域コミュニティは人数が少ないので、もし地方でイベントをやる際にご一緒できればいいなと思います。あとシニアの会は60歳以上の方が中心ですが、いろいろな方に来ていただいて盛り上げていただけたら嬉しいです。
ーわれわれCM協会の会員は、CM協会というどうしても閉じた中で情報や意見交換をしてしまいがちですので、このような建設コミュニティなどに参加させていただくと視野を広げることができると思いました。本日は貴重なお話を伺うことができて、とても有意義なインタビューになりました。どうもありが とうございました。