日本CM協会設立25周年『マネジメントの地平』
第2回:ファシリティマネジメント(FM)/プロパティマネジメント(PpM※)
※プロパティマネジメントの略称は「PM」が一般的に用いられますが、『CMガイドブック』ではプロジェクトマネジメントとの混同を避ける意味で「PpM」としており、それに倣った表記としています。
企画特集「マネジメントの地平」の第2回は、CM業務の発注者や各種施設の運営管理者・ユーザー側のマネジメント領域に着目し、ファシリティマネジメントとプロパティマネジメントを取り上げ、各領域の主要な団体からお話を伺いました。
(機関誌編集委員会)
Ⅱ. プロパティマネジメント(PpM)
① 一般社団法人日本ビルヂング協会連合会 日本ビルヂング経営センター
ビル経営者全国組織の下でプロパティマネジメント(ビルマネジメント)の普及啓発を推進
小泉 裕雅 氏(一般社団法人 日本ビルヂング協会連合会 日本ビルヂング経営センター 事務局長)
井上 俊広 氏(一般社団法人 日本ビルヂング協会連合会 日本ビルヂング経営センター 調査役)



軍司 太郎(日本CM協会『CMAJ』編集委員/日建設計コンストラクション・マネジメント(株))
石原 隆裕(日本CM協会『CMAJ』編集委員/Fortec Architects(株))
組織の沿革と現状
日本ビルヂング協会連合会(以下、日本ビル協連合会)は1930年(昭和5年)につくられ、創立50周年にあたる1980年(昭和55年)に任意団体として日本ビルヂング経営センター(以下、ビル経営センター)が設立されました。設立の主な目的は、ビル業界の人材育成を進め、ビル経営の専門家を育成する教育機関を設立することでした。翌1981年(昭和56年)に財団法人として認可を受け、通信教育講座を開始し、2011年(平成23年)に一般財団法人に移行しました。
2023年には日本ビル協連合会と合併し、現在は日本ビル協連合会の内部組織として一体運営されています。合併により日本ビル協連合会の全国19協会のネットワークを活用して、セミナーなどを積極的に展開できるようになりました。例えば北海道や大阪のセミナーではビルオーナー、デベロッパー等の方々が100人ほど集まり活況を呈しました。
主要な活動内容
ビル経営センターは、ビルの経営管理に関する人材育成、知識の普及を図るビル業界唯一の機関であり、ビル経営管理士制度の運営・管理、ビル経営管理講座の開催、各種課題に対応したセミナーの開催、情報の提供等の事業を行っています。当センターの活動を大きく3つに分けると、以下になります。
- ビル経営管理士(CBA:Certified Building Administrator)の資格試験の試験運営や登録業務
- 人材育成として、ビル経営管理講座の運営と基礎講座の開催、各種セミナーの実施
- ビルの経営や運営管理に関する調査研究や会員向けの情報提供
ビル経営管理士と日本ビル経営管理士会
ー日本ビル経営管理士会(JBMS)
2000年(平成12年)に日本ビル経営管理士会(以下、JBMS: Japan Building Management Society)が創設されました。現在、「ビル経営管理士」(CBA)が4,000人ほどおり、そのうち約1,600人の方々がJBMSに入会しています。
JBMSでは「ビル経営管理士」(ビル経営管理士登録者)、「ビル経営管理士試験合格者」と「ビル経営管理主任」(ビル経営管理講座修了者)を対象に入会手続き(毎年更新)を行った方を会員とし、会員の資質の向上を図るため、ビル経営管理に関する共同研究、研究交流、知識および技能の普及に関する活動を行っています。ただし、ビル経営管理士資格取得者も、JBMSの入会は義務というわけではありません。
JBMSのメリット
JBMS入会のメリットとして、以下が挙げられます。
- 教育や動画の公開
- セミナー参加の割引
- CBAセミナーへの無料参加
- BMIネット・アカデミーでの過去のセミナー動画視聴
- 年6回発行される機関誌『びるぢんぐ』の無料Web配信
- 年1回のネットワーキングイベント
- メンバー専用サイトの利用
ビル経営管理に関する講座とビル経営管理士試験
ビル経営センターでは、ビル経営管理に関する3つの講座を開講しています。
ビル経営管理講座
ビル経営管理講座は、1980年(昭和55年)の開講以来40年におよぶ実績を誇る通信教育講座であり、ビル経営管理業務を体系的に学べるわが国唯一の実務講座です。
ビル経営管理講座はビル経営管理に必須の実務知識が習得でき、「ビル経営管理士」試験に即応した通信教育システムであり、ビル経営管理士養成講座であると同時に研修講座です。
建築コストの高騰により、東京でさえも再開発が頓挫するプロジェクトが出てきている昨今、リニューアルや維持管理、テナントとのコミュニケーション、ビルの価値最大化などがこれまで以上に重要になっています。
当センターはプロパティマネージャーを育成する場と捉えている人が多いようですが、実際にはビル経営管理講座の内容はアセットマネジメントの分野も幅広くカバーしており、既存ビルの運営を適切に遂行することによって物件価値の最大化を追求する必要性が高まっている昨今、よりいっそう重要性が高まっていると認識しています。「ビル経営管理講座」は、3科目・6冊のテキストとWeb講義で構成されます。本講座の修了要件となる添削問題と確認テストは、すべてWeb上の「受講生サイト」で受けることができるため、時間や場所を問いません。講座は毎年6月からスタートして9月末に終了、修了認定を受けた後、12月頭にビル経営管理士試験があります。講座修了者は、4科目ある試験で30点分の論述部分が免除になるメリットがあります。テキストは、実務を体系化した「企画・立案」「賃貸営業」「管理・運営」の3分野でそれぞれ上下巻に分かれた6冊構成となっています。
試験の合格発表は翌年頭で、合格し登録を行うことで「ビル経営管理士(CBA:Certified Building Administrator)」の称号が付与されます。また、講座修了者は試験に合格しなくてもJBMSに入会することが可能です。
業務管理者講習
ビル経営管理講座修了者が、引き続き実施される「小規模不特事業講座」を修了することによって、小規模不動産特定共同事業の「業務管理者講習」を修了したことになり、小規模不動産特定共同事業の業務管理者に求められる人的要件を満たすことができます。
ビル経営基礎講座
ビル経営基礎講座は、ビル経営管理初心者にもわかりやすく、ビル経営・ビル管理を解説するものであり、ビル経営管理の業務経験の浅い方々やビル経営管理業務をめざす方々が、業務内容の基礎を理解するために最適な講座です。このエントリーレベルの基礎講座を修了後、次のステップとしてより高度な学びを獲得するべくスムーズにビル経営管理講座に移行するという一連のプログラムを用意しています。
資格取得者の属性と業界の広がり
ビル経営管理士資格取得者は5年前まで20%に満たなかった女性比率が25%を超えてきました。これは嬉しい変化です。受験者の年齢層は、十分に経験を積んだ30代の時期に受験する人が多いようですが、大手企業では20代で受験する人もいらっしゃいます。
加えてビル経営管理士資格は、ビルの企画から賃貸管理まで、ビルの経営に携わっている人全てが受験できる資格と位置づけています。
ビル経営管理士資格には、不動産証券化の場面で公的な位置付けが与えられています。不動産特定共同事業における「業務管理者」の要件を満たすほか、投資運用業の登録や不動産投資法人(REIT)資産運用会社等の宅地建物取引業法に基づく「取引一任代理等認可」審査において「重要な使用人」の人的要件として認められます。また、小規模不動産特定共同事業に携わる方々も一定数いらっしゃいます。
資格更新制度
ビル経営管理士の登録の有効期間は5年間であり、更新が必要です。
更新要件として以下の4つのうちいずれか1つに該当しなければなりません。
- A.賃貸ビル経営管理に関する研究報告書の提出
- B.JBMSへの入会
- C.指定する講習会への1回以上の参加
- D.指定する講習会の配信動画の1回以上の聴講
国際的な取り組みと連携
ビル経営センターは、1980年アメリカのBOMA(Building Owners and Managers Association)とその教育機関BOMI(Building Owners and Managers Institute)に倣って設立された経緯がある一方で、ビル経営管理講座・ビル経営管理士資格試験とも現状国内資格の位置付けです。近年の不動産証券化の流れもあり、グローバルな不動産プレーヤーが受講するようになってきているなか、受講者の裾野の広がりに対してどのように取り組んでいくのかが今後の課題と捉えています。
セミナー活動と継続教育
当センターではビル経営管理に役立つ各種セミナー・イベントを開催しています。
ビル経営研究セミナー
「ビル経営研究セミナー」は、ビル経営管理ビジネスにおけるタイムリーなテーマを毎回取り上げ、各分野の専門家を講師に招いて開催しています。当センター設立から45年以上にわたり年10~12回のセミナーを、資格試験を実施する前から開催していて、現在累計で460回以上を数えます。こちらは一般の方でも参加可能です。最近のセミナーテーマとしては、「オフィスビル賃貸管理業務の法律問題」「賃料の増減額問題」「立退き交渉に関する実務」「オフィス市場動向」「不動産証券化について」などがあります。
CBAセミナー(JBMS会員は無料受講可)
また、「CBAセミナー」はビル経営管理士(CBA)制度の普及を促進し、ビル経営管理士およびJBMS会員への継続教育の一環として幅広い観点から実務的なテーマでセミナーを開催しています。こちらは、ビル経営管理士およびビルJBMS会員限定のセミナーです。
最近のテーマでは、「脱炭素や環境対応の高度化」のような環境関連のもの、「法改正」や「トラブル事案に対する解決策」については弁護士の先生にもご登壇のうえ解説いただきました。ほかには、「再開発の難易度の高まり」「立ち退きに対する実務的な対応」「インフレ下での賃貸契約の留意点」「DXやIoT等の新技術を活用した効率的なマネジメント」など現代の不動産ビジネスで直面する問題点をテーマにしています。
BMIネット・アカデミー
「BMIネット・アカデミー」は、当センターが運営するセミナー動画配信サイトです。当センターが過去に開催した各種セミナー動画をオンデマンドでご提供しています。セミナー(アーカイブ)に申し込まれると、視聴期間内は回数制限なく、いつでもご視聴いただくことが可能です。ライブ配信を見逃した方、もう一度セミナーを視聴したい方も利用できます。
イベントやアワード
ネットワーキングイベント
アワード等の制度は特に設けておらず、ネットワーキングイベントと呼ばれるJBMS会員限定のセミナー&交流会を会員のメリットとして実施しています。
これは、JBMS会員の資質向上を図るため、ビル経営管理に関する共同研究、研究交流、知識および技能の普及に関する活動の一環で開催しています。
コロナで3年間中断していましたが、2023年にコロナ明け初めてのネットワーキングイベントを、新たな企画として箱根のワーケーション施設視察を兼ねる形で再開しました。
2024年は株式会社エンジョイワークス代表取締役の福田和則様を講師にお招きし、「地域活性ローカルファンド」をテーマに、不動産特定共同事業のスキームを活用して、日本の空き家、遊休不動産の再生と利活用から地域事業のファンド化への取り組みについて、お話しいただきました。
2025年は「まちづくりの未来像について」というテーマで、三菱地所株式会社丸の内開発部長である吉村友宏氏と國学院大学教授の吉見俊哉氏にリレー講演をお願いしました。吉村氏は「進化を続ける「丸の内エリア」のまちづくり」、吉見氏は「これからのまちづくり」について話されました。
いずれのネットワーキングイベントでも懇親会を設けて、講師の方や会員同士の交流を図りました。
建設業界の課題と今後の展望
建設業界には現在、建設費高騰、人手不足、職人の高齢化とリタイア、若手の担い手不足などの課題があります。
深刻な人手不足、担い手不足の中でビル経営管理士資格とCM資格(CCMJ、ACCMJ)は中立的な立場での専門性が共通しており(ビル経営管理講座の「企画・立案」分野でもコンストラクション・マネジメントがカリキュラムに含まれています)、いずれも今後さらに重要な資格になってくるでしょう。当センターと日本CM協会が継続的に情報交換、協力し合いながら、ぜひ世の中のために役立てていきたいです。