日本CM協会設立25周年『マネジメントの地平』
第2回:ファシリティマネジメント(FM)/プロパティマネジメント(PpM※)
※プロパティマネジメントの略称は「PM」が一般的に用いられますが、『CMガイドブック』ではプロジェクトマネジメントとの混同を避ける意味で「PpM」としており、それに倣った表記としています。
企画特集「マネジメントの地平」の第2回は、CM業務の発注者や各種施設の運営管理者・ユーザー側のマネジメント領域に着目し、ファシリティマネジメントとプロパティマネジメントを取り上げ、各領域の主要な団体からお話を伺いました。
(機関誌編集委員会)
Ⅱ. プロパティマネジメント(PpM)
② IREM JAPAN
国際団体「IREM」の日本支部として「CPM®」資格を基軸に活動

軍司 太郎(日本CM協会『CMAJ』編集委員/日建設計コンストラクション・マネジメント(株))
石原 隆裕(日本CM協会『CMAJ』編集委員/Fortec Architects(株))
IREMについて
私は兵庫県芦屋市の不動産会社アシスト芦屋の代表で、2025年からIREM JAPANの会長をしています。
IREM(Institute of Real Estate Management)は1933年、アメリカ・シカゴで発足した団体であり、管理を通して不動産投資の価値を最大化するということを目標に組織されたコミュニティです。教育を受ける、情報を分かち合う、さらに優れた管理を促進させることに専心する者たちの集まりです。
CPM®(Certified Property Manager®=公認不動産経営管理士)は、IREMが賃貸不動産経営管理において高い倫理観と高度な専門性を持つと認めた個人に授与する資格です。2024年3月現在、グローバルな組織であるIREMは、賃貸不動産管理に関する知識能力を証明する複数の資格認定をしていますが、CPM®はその中でも最高峰に位置づけられています。CPM®のほかに、優秀な不動産管理会社であることを認定する法人向けのAMO®(Accredited Management Organization=認定不動産管理会社)資格などがあります。
IREMは全世界6カ国で96の支部を有して活動しており、2万人を超える会員、約8千名のCPM®、約500社のAMO®を有しています。
支部がある国は日本、韓国、南アフリカ、ブラジル、アメリカ、カナダで、1つの国に複数の支部をもつ国もあります。また、新たにUAE が支部として認定されました。
IREM JAPANについて
設立経緯
IREM JAPANは2000年に任意団体 CPM®推進協議会として、日本賃貸住宅管理協会(日管協)の人たちがメインメンバーとなって発足し、2025年で25周年を迎えました。
2005年にIREMの110番目の支部として認定され、2008年にNPOとして認定されましたが、2013年に一般社団法人IREM JAPANを設立し、運営を移行しました。
現在の体制と会員数
2017年に東日本、西日本、九州がIREM支部として認定され3支部体制となり、さらに2019年には北海道・東海がIREM支部として認定され現在は5支部体制です。
現在、会員数は929名であり、780名の CPM® 資格者、AMO®認定会社は12社です。
CPM®資格取得の条件とメリット
CPM®資格取得の条件
CPM®取得のためには以下の必須要件があります。
- 不動産管理業務経験が3年以上
- IREM JAPANに入会する
- 「倫理」の講座を受講する
- 各種の公式セミナーを指定日数受講し、それぞれの試験に合格する
- CPM®検定試験に合格する(公式セミナー全コースから出題(150問:オンライン選択方式)
- 最終試験としてMPSA試験(Management Plan Skills Assessment)を受験。現状分析と改善提案のマネジメントプランを作成する
CPM®資格取得のメリット
CPM®資格を取得することによって、以下のメリットがあります。
1.体系的な不動産管理の知識が獲得できる
IREM JAPANは体系的にまとめられた不動産管理の知識を学べる国内で唯一の場です。倫理、金融電卓、メンテナンス、人材管理、マーケティング、金融評価方法など8~9項目を1講座約2日間で学びます。その間、約19日同期と一緒に過ごし、「不動産業界のMBA」とも言われます。
2.数字と理論による提案の実現
勢いや人情、勘などに頼った提案から脱却することができます。キャッシュフローツリーを徹底してトレーニングすることで、オーナーの運営状況が手に取るように理解できるようになり、オーナーの抱える問題点を整理して、投資手法や市場の数値を駆使した論理的な提案が可能になります。また、講座を受けることで不動産投資の構造を完全に理解でき、借入を含む高度なファイナンス知識を習得できます。
CPM®資格の講座を受け、資格を取得することで、オーナーの御用聞きから、オーナーの目標をどう設定してどう達成するかを提案できる、オーナーに伴走するパートナーに変わるということが、受けた人たち皆の全体的な感想です。
また、受講者には不動産鑑定士や税理士の方々も結構いて、その人たちが口々に、「借り入れをここまで教えてくれる資格はこれしかない」と話しています。高度なファイナンスを学べることが、CPM® 資格試験を受ける理由になっている人が多いです。
私自身、相続コンサルティングの需要が多く、この知識を応用して、相続物件を賃貸物件にしたり、出口戦略を作ったりしています。
3. CPM® 同士の強力なネットワーク
CPM®資格取得のメリットの中でもCPM®同士の情報交換と相互支援が一番大きいかもしれません。
年次総会・アワードでは各社スポンサーがブースを出して交流したり、アメリカのIREM本部の会長が来て宣誓式を行ったりした後、最後にパーティーをして交流を図ります。
また、支部セミナーも開催され、セミナー後の懇親会やゴルフなどで情報交換が行われ、全国規模での専門家ネットワークが構築され、刺激を受けて帰ることも多いです。
CPM®は講座を受け資格を取得するのに82万円ほどかかります。けれども知識欲と向上欲の高い同じ物差しを持つ日本の仲間との化学反応がすごくあり、それは他に代え難いものです。
CPM®を取得した人は仕事の質が圧倒的に変わる人が多いです。借入れやファイナンスのことを徹底的に勉強することで、リスクをどうコントロールするかを学ぶので、思い切った挑戦ができるようになります。
組織運営の現状と課題
IREM JAPANの会員数は2005年設立時の330人から2025年で929人になり、1,000人の大台目前です。また、新規CPM®はここ数年、1年につき70~80人ぐらいです。
一方で最近退会者が多いことが課題です。コロナ後に退会者が増加しました。その理由の1つに会費が高いことがあります。CPM®を取得したらアメリカ本部に登録しなければなりません。そうするとアメリカに毎年払わなければならない金額が別途、毎年400ドル=8万4千円ぐらいであり、結構な金額です。それが退会者が増えている要因でもあります。現在退会率は約6%ですが、5%以下を目標に運営しようとしています。
各支部の状況
IREMが支部を作ったのには、ローカルごとでネットワークを広げていくねらいがあります。仲間が増えれば増えるほど、自分のビジネスに返ってくる相乗効果も大きいです。
5支部の現状
全国に5つある支部の現状です。支部によって状況にばらつきがあります。
- 北海道支部…盛り上がりを見せ、会員数も増え退会率も低い
- 東日本支部…会員数は増加傾向だが退会者も多い
- 東海支部…会員数の新規獲得に伸び悩む
- 西日本支部…受講者は多いが資格取得後の退会が課題
- 九州支部…順調な成長を見せ、各県にリーダーを配置
全体として会員数は東日本が一番多いですが、北海道10%、東日本41%、東海6%、西日本16%、九州27%くらいの内訳です。
新たな成長戦略
退会者を減らし新規入会者を増やして、会員数1,000人ではなく2,000人、CPM®取得者1,600人の組織にすることをモットーに、昨年1年間議論して、2026年を変革の年として積極的な成長戦略を打ち立てました。
専門委員会を各支部に設置
1つは各支部が自由に運営するのではなく、ある程度統一感を持つような戦略を考えました。縦割りの支部運営だったものをマトリックスにして横断的な組織へと変革を図ろうとしています。各支部に「ディベロップメント」「リクルーティング」「マーケティング」「コミュニケーション」「マネジメント」の5つの専門委員会を設けました。支部の縦のつながり(地域)だけではなく、横のつながり(専門性)を交差させ、各支部から委員会メンバーを募って、年7~8回はオンラインで打ち合わせしてくださいとお願いしています。
専門委員会のミッションは、
- ディベロップメント委員会…会員向けの高度な学びの提供と、CPM®としての実力向上
- リクルーティング委員会…セミナー講師の育成とスカウト、次世代を担う会員からの人材発掘と動機付け
- マーケティング委員会…広報・渉外と会員獲得を通じた、会の認知度向上と外部連携・外部収入の獲得
- コミュニケーション委員会…支部間交流、懇親企画を通じた会員同士の親睦を深め、集まる場作り
- マネジメント委員会…組織運営、財務管理を司り、会の運営基盤・ルール作りと事務局連携
となっています。
特命チームとその他のチーム
専門委員会のほかに、公式セミナー委員会は公式セミナーやインストラクターを統括し質の向上を図ります。また「倫理啓蒙ボード」は倫理観を犯した人を訴えて裁けるような内容であり、倫理啓蒙の継続と、各支部リーダーおよび会員編倫理基準を徹底します。
さらに、物件に対する利益率の調査データをつくる「NOI調査委員会」、NPO法人を清算して一般社団法人へ組織活動を完全に一本化する「NPO清算」や「日管協スペシャルチーム」があります。そして、300人規模のお祭りである、毎年1回6月に開催するアワードのための「アワード実行チーム」があります。毎年支部で持ち回りで開催しますが、実行会長、実行委員長を決めて実施しています。
IREMアワード2024の様子
専任事務局長(IAE)の設置
アメリカIREM本部と密接に連携するプロフェッショナルである専任の事務局長を配置し、事務局のオペレーションを良くして、理事のボランティア負担を解消します。
「CPM候補生」制度を導入
全科目受講(受講料80万円)のハードルを下げるために、2科目試行制度(15万円)を適用し、「倫理」「金融」2つの講座取得でCPM候補生と認定。
9つの重要プロジェクト
「2,000人体制」に向けて、以下の「9つの重要プロジェクト」の実行を約束します。
[ブランド確立/外部連携]
- スポンサーシップ制度:企業協賛を募る日本版プログラムの本格始動
- 日管協共同資格:賃貸住宅経営アドバイザー等、新資格による業界認知度向上
- AMO戦略再構築:AMOクラブ創設によるブランド化と地位確立
[組織/システム基盤]
- 専任事務局長(IAE)採用:プロフェッショナルな運営基盤の構築
- 新システム導入:会員管理システムを刷新し、情報共有をスムーズに
- NPO法人の清算:一般社団法人への一本化による効率的かつスピーディーな運営
[会員価値/コミュニティ]
- 投資分析シート支部説明会:企業協賛を募る日本版プログラムの本格始動
- NOI調査・倫理啓蒙:全国を訪問し、データ構築と倫理基準を再徹底
- 中長期の日本戦略構築:2,000人体制に向けた最先端の未来像の提示
財務状況
2026年予算
2026年の予算は、収入1億5500万円、支出1億4500万円、当期剰余金600万円です。主要収入源は、事業受講料(CPM講座等)、会員年会費(1人2万円)、またアメリカ本部からのオペレーションフィーです。
予算、基盤、マトリックス組織(5支部×5専門委員会)があり、9つの重要プロジェクトを動かして、将来的に2,000名体制となるための礎を今年作り、予算、組織、プロジェクト、全てのピースがIREM JAPANの「2,000人体制」という共通のゴール、次のステージへと向かって、いま進んでいます。